障がい者ランナーがマラソン大会に!伝えたいのは共生。ぽっかぽかランナーズ代表・林さんにインタビュー

知的障がいや身体障がいのある方がマラソンを走りそれを伴走ランナーが支える、そのマッチングを進める「ぽっかぽかランナーズ」という団体があります。
障がい者のマラソン、というと視覚障がい者がマラソンに参加しているのを思いうかべる方も多いかも知れませんが、今回ご紹介するのは、知的障がいや身体障がいのある方のマラソンです。
あるアイテムの登場で、足を動かせなかった方が動かせるようになるといったドラマも生まれているそうです。
認定NPO法人ぽっかぽかランナーズ代表の林優子さんにお話を伺いました。


きよくん(左)、林優子さん(中)、クレア(右)

きよくん、走れるの!?「思い出作り」からマラソン団体の設立まで

ーー活動を始めたきっかけを教えてください。

林さん:現在25歳になる私の息子、きよくん(聖憲)はドラベ症候群という難病と闘っています。
5ヶ月の時に初めてのけいれん発作。それからは木漏れ日や縞模様を見るだけで、2~3時間も続く発作がおきるようになりました。

そんなきよくんが高校1年生の頃、周囲が思ってもみなかったことが起こります。
特別支援学校の1~3年生が参加するマラソン大会で、全校で1位を取ったのです。
正直、走れるのかもよくわからなかったきよくんが、です。

同じころ、ドラベ症候群は症状のひとつとして身体のゆがみを進ませることがあり、成人になる頃から車いす生活になってしまうかも知れないということを知りました。

そこで、「思い出作り」のつもりで一般のマラソン大会に出場しました。
本人が走れるのであれば、もっと走らせてあげたい、私自身もその可能性をもっと伸ばしてみたいという気持ちが芽生えたのです。

参加してみて、きよくんも私も楽しさや達成感を得ることができました。
しかし、同時に参加者に障がいのある方が少な過ぎる、ということも気になりました。
視覚障がい者が伴走ランナーとともに走るのは知られるようになっていますが、知的障がい者や身体障がい者が伴走ランナーとともに走ることはまれなようでした。

私はランナーと障がい者ランナーを引き合わせる企画を立ち上げ、マッチングしたランナーたちがいろいろな大会にチャレンジしていけるような支援がしたいと思いました。
障がいがある方もマラソンを通して、社会に飛び込んでいけるように、また、それを当たり前に受け入れてもられるような社会になればという思いを込めて。
それが「ぽっかぽかランナーズ」です。


練習会にて

ーー具体的には、日々どのような活動を行っているのですか?

林さん:団体としては、年6~9回マラソン大会に出ています。
月一回宝塚と大阪で練習会を開催。伴走者は口コミなどで参加者が増えています。
障害者ランナーは現在30名ほど、伴走者は50人ほど登録してくれています。

 

ーー伴走者はどのようにサポートするのでしょうか?

林さん:まず「伴走」と書かれたビブスを着てもらいます。
サポートの仕方は、手をつなぐ、声かけをする、車椅子のハンドルサポートをする……などひとりひとりの障がい者によって違うため、練習会を通じて実際に体験してもらいます。
どの障がい者ランナーと伴走ランナーをマッチングさせるかは、練習会で色々と調整し、大会にはベストマッチングで挑んでいただいています。
伴走ランナーは一方的に障がい者ランナーを助けているように思われますが、実はそうでもないのです。ゴール後に感極まって涙を流すのは、障がい者ランナーより伴走ランナーに多いのです。


障害者ランナーも伴走ランナーも楽しく参加している

可能性を広げてくれた「足こぎ車いす」の登場

ーー参加者の方が持つ障がいは、様々ということですね。

林さん:そうです、知的障がいのある方もいれば、身体障がいを持つ方もいます。
ぽっかぽかランナーズでは身体障がいのある方に「足こぎ車いす」を使用してのサポートを行っています。

足こぎ車いすというのは、車いすの前にペダルがついていて、ペダルをこぐことで前に進めます。
もともとは脳梗塞などの後遺症で半身麻痺のある方のリハビリ用に開発されました。
手足が動くのは脳からの命令があるからで、右側の脳に障がいのある方は左半身が、左側の脳に障がいのある方は右半身が動きません。それなのに足こぎ車いすに乗ると両足が動くのです。
それは右足から左足へ、左足から右足へと反射的な指令が脊髄の「原始的歩行中枢」から出ていると考えられているそうです。まだ歩けない赤ちゃんを立たせて、歩かせようとすると、右足、左足と交互に足を出すのと同じです。

その働きによって、立てない方が立てるようになったり、歩けない方が伝い歩きが出来るようになったりと奇跡的な回復をされています。
とにかく、自分で動かしていることに感動する方が多いです。
脊髄損傷してしまった方も足こぎ車いすを使って足を動かせたということがありました。

実は、私がたまたまテレビで見かけたのがきっかけなのですが、「これだ!」と思い連絡を取り3週間ほど貸してもらったんです。
すると、自転車はおろか三輪車もこげなかったきよくんが、足こぎ車いすなら動かすことができたんです!

足こぎ車いすのお陰で、今では1.2㎞を自分の足で走るまでに回復しています。
足こぎ車いすなら、10㎞走っています。
日常の歩き方も、爪先を擦って歩いていたのですが、それがなくなり、靴も傷まなくなりました。


足こぎ車いすで走るきよくん

2020年、誰でも参加できる「ぽっかぽか共生マラソン」を開催

ーーぽっかぽかランナーズのこれからの活動について教えてください。

林さん:メンバーの中にはハーフやフルマラソンに挑む知的障がい者の方もおりますが、もっと短距離のクラスに参加しているメンバーも多いです。そこで、1.5kmクラスから用意する「ぽっかぽか共生マラソン」を2020年2月24日(月)に当団体の主催で行うことが決まりました。

コースはアップダウンがないものにし、制限時間も余裕を持たせます。参加年齢は3歳からとし、年齢も障がいのあるなしも関係なく参加できるユニバーサルなマラソン大会の道しるべになれたら、と思っています。

ユニークなのが、何度もすれ違いお互いの顔を見ることができるコース設定にしているところです。
普通のマラソン大会って他の参加者の後姿を見て走りますよね。「ぽっかぽか共生マラソン」では何度もすれ違いながら励まし合って楽しめるようなものにしたいです。

きよくんが小さい頃、習い事をさせたくとも断られたことがあります。マラソンも、大会によっては障がいのある者の参加を断られることがあります。
障がいがあってもサポートの方法を模索すれば何とかなることがあるんです。
私たちはこの大会も、そして日々の活動も、「誰も断らない」をモットーにして邁進しています。